カ ナ ダ 公 演


片岡嶋之亟丈(当時は孝二郎)は、1997年9月15日から24日まで、国際交流基金他の協力で、カナダのトロント・モントリオールで歌舞伎の講演会・実演会を実施。現地日本人はもとより、カナダ人の歌舞伎ファンよりも絶賛を浴びました。このページではカナダ公演のスケジュール、関係者の祝辞など、孝二郎(新・嶋之亟)の活躍ぶりを紹介します。


「藤娘」
モントリオール植物園 日本庭園 日本館



9月15日(月)
成田発CP002便14時55分 トロント着13時50分
国際交流基金トロント事務所にて三公演の打ち合わせ及び当文化センターでの公演セットリハーサル

9月16日(火)
シェリダンカレッジにて「女形のできるまで」及び「藤娘」公演。
(シェリダン・カレッジはトロント市の南西約37キロに位置するオークヴィル市にある。トロントより車で50分。)
公立専門学校であるシェリダンカレッジの演劇コースとミュージカルコースが通常の授業日程を変更し、学生、担当教授、技術スタッフ、養成コース教授等約百五十名が参加。
女形のメイクアップから着付け、かつらまでをデモンストレーション。学生の質問を受けながらの進行は相次ぐ質問攻めで、舞台、客席といった枠を感じさせない交換があった。スタッフの衣裳係、かつらの床山さんにも参加してもらい学生からの問に対応してもらった。すべて出来上がったところで舞踊「藤娘」を踊った。終了後学生に参加してもらい女形の見せ場である「お里のさわり」を演じ歌舞伎を身近に感じてもらった。トロント総領事ご夫妻と夕食。トロント公演について説明

9月17日(水)
11時30分 ヨーク大学にて「女形のできるまで」及び「藤娘」公演。
(ヨーク大学はトロント市の北16キロ。車で40分の距離。)
構内のジョセフ・G・グリーンスタジオに同大学の全学科が集まる「プライムタイム」学科集会の枠で、 学科長、学生、演劇関係教授等約二百五十名が参加。前日同様のプログラムで公演。
参加人員の差もあったが質問が切れず、衣裳が仕上がっても、次の「藤娘」に入るため断る程だった。
通訳進行の国際交流基金青柳氏が学生達とのコミュニケーションを大変効果的に盛り上げて下さり、 日本の伝統文化の理解者を若い層にアピール。
19時 日本文化センターイベントホールにて「女形のできるまで」及び「藤娘」公演。
(国際交流基金トロント日本文化センターでの詳細はニューカナディアン紙に紹介された。)

9月18日(木)
トロント発CP1950便10時50分 モントリオール着11時51分
18時 植物園日本庭園日本館にて「藤娘」公演。
日本庭園を館のガラス戸越に背景とし、藤棚をセット。紫の藤の吊り枝の中で歌舞伎の様式美を十分に味わってもらった。
初めて歌舞伎を見る人も多く、唖然として見ていたが、終わるや否や大喝采をいただいた。
モントリオール総領事官庁にて夕食会

9月19日(金)
19時 日本庭園日本館にて「藤娘」公演。
日本館、日本庭園基金ギャラ夕食会のため各界の名士が多く、歌舞伎への関心も高く、 「藤娘」が終わった後「お里のさわり」をお客様にお手伝い頂いて演じ、女形の魅力、雰囲気を味わってもらった。
終演後ロビーでお客様と記念写真に納まる等、身近な歌舞伎をアピール。

9月20日(土)
日本人敬老会、演劇関係者、学生、教授、ケベック州俳優、文芸評論家等約250名が参加。
「女形のできるまで」をビデオプロジェクターで映しながら解説デモンストレーション。
衣裳仕上り後「藤娘」を踊った。引き抜きによる衣裳の早変りを十分に味わってもらった。
終演後、敬老会他参加関係者による懇親会で質問を受けたり、歌舞伎の美を説明する等日本文化の紹介で話が盛り上がった。
18時 植物園オーディトリアム・ホールにて「女形のできるまで」及び「藤娘」公演。

9月22日(月)
11時 モントリオール大学東アジア研究所にて英語で講演。
関係教授陣、学生約120名に「歌舞伎概論」を約一時間英語で講演した。続く懇親会で質問が相次いだ。(時間が限られていたので女形のディテール、メイク等は残念ながらカット。)
14時 モントリオール大学中央ホールにて「藤娘」公演。
モントリオール大学学長以下教授陣、モントリオール総領事ご夫妻、ケベック州ラヴァル市高齢者住宅 「メモワール」メンバー、学生、市文化関係者約150名が参加。
天井高のホールに藤棚セットは大変だったが、大学の協力により美しい花園が完成。
踊り終って総長にお手伝い願い「女形戸のからみ」を即席に演じ大喝采を受けた。
終演後も質問、記念スナップが続いた。

9月23日(火)
モントリオール発CP911便バンクバー経由成田へCP003便

9月24四日(水)
成田着15時30分

カナダ公演に対する、各界のかたがたよりの賛辞です。


在モントリオール総領事のメッセージ
在モントリオール総領事(当時) 猪又忠徳




今般歌舞伎俳優片岡孝二郎(新・嶋之亟)丈をお迎えしてジャパン・ナイトに皆様方をお迎えできましたことは、私の喜びとするところであります。

歌舞伎は衣裳の豊かさ、メイクアップの華やかさ、舞台装置の鮮麗さ、役者の演出性の高さを見れば、紛れもなく最も幻想的な芸術の一つであります。

歌舞伎はしばしば「日本の伝統芸能の宝庫」と呼ばれていますが、その誕生から四百年越える歴史を通じて、常に革新と斬新なスタイルを求めながら時代の先端を模索し続けてまいりました。今夜の片岡氏の解説とデモンストレーションを通じて、こうした古さと新しさを兼ね揃えた歌舞伎を理解していただければ幸いです。

今回のジャパン・ナイトはスポンサー側のご協力、協賛者の方々の影のお力添え、そして特に岩城祐子日本ケベック友好協会代表の御献身に負うところが多く、この席をお借りして労を惜しまれず協力頂いた全ての方々に対し、心より感謝申し上げますと共に、参加者の皆様が素晴らしきこのジャパン・ナイトを十分に楽しまれるように希望して、私の挨拶に替えさせていただきます。


岩城氏のメッセージ
日本・ケベック友好協会代表 岩城祐子


この日本・ケベック友好協会活動の一環として、モントリオールとトロントに於いて歌舞伎公演を実現できましたのは、多くの方々のご協力の賜と深く感謝しております。 私の先祖の岩城家は1000年以上の昔から日本の東北地方南部の領主として地域社会に役立つ良い仕事をしてきております。私も「自分の周囲の人達に、出来る限り親切にしよう。そうすれば自然に親切の輪ができて、その輪がやがて世界に広がってゆき、世界に平和が来る」という信念です。日本・ケベック友好協会は、この思いを込めて設立されました。毎年、モントリオールから学生やアーティストを招いてホームステイをしていただいたりして、日本とケベックの友好、文化交流に協力しております。今後もこうした文化交流の仕事を続けて行きたいと存じますので、引き続きご支援を賜わりますようお願い申しあげます。




ニュー・カナディアン紙の取材記事(岩城さんと一緒の写真が掲載されました)


日本文化の愛好家 Lucie Lavoie ルーシ・ラヴォア
モントリオール市立植物園・日本庭園・日本館館長(当時)


日本の文化に関心を持ち始めて、16年になります。1981年の夏に、丁度マッギル大学に入学する前に初めて日本へ行きました。

2週間の滞在予定が突然半年に延びました。その旅が私の生涯の方針を全面的に変えることになりました。その時以来、趣味で日本文化の冒険に熱中しています。好奇心の強い私は卒業してから東京にある上智大学に大学院生として入り、日本の文化を積極的に勉強しました。現在はモントリオール市立植物園の日本庭園・日本館の責任者として日本の文化を見学者に紹介しながら、日本の文化を研究するよう心がけています。

去る1997年の9月に片岡孝二郎(現・嶋之亟)氏の歌舞伎デモンストレーション(女形のできるまで)と踊りの実演をモントリオール市立植物園の日本館で開催しました。館長になって約六年目になりますが、数多くのイベントや展覧会を開催しました中で片岡様の歌舞伎イベントが我々にとっては、一番豊富な意味の深い芸術のイベントでした。目に奇麗な顔、耳に面白い音を聞かせていただきました。

楽しくて我々カナダ人に思いがけない本物の男性の「とても女らしい、色っぽい身体の動き」を体験させていただきました。

片岡様に逢う前に歌舞伎の有名なポスターや、一般的な歌舞伎写真集や、日本の文化史によく現れる近松門左衛門の知識しかなかった私は、この大きな隙間をふさぐ為に片岡様のお蔭で歌舞伎の勉強に取り組みました。

けれども、本物を体験するまでは歌舞伎の美や幽玄を全く感じることができません。独特のせりふも味わうことができません。楽屋にお邪魔した私はお化粧の段階から舞台の踊りまで片岡様の実演を楽しむことができ、日本の伝統的な音楽や雰囲気を味わうことが出来ました。

一番感心したことが何だったのかいまでも具体的に言葉にすることが出来ません。お白粉に現れた女の美しさかしら。音楽にぴったり合った身体の動きかしら。我々の耳に音楽のように聞こえたせりふかしら。

片岡様達の短いモントリオール滞在中の数回の実演に参加した数百人の観客達が私と同じ様に貴重な日本文化の一部に触れることが出来ました。片岡さん、本当にどうもありがとうございました。






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